聴覚障害者の方にこそ運動が必要な理由|デフリンピックから考える健康維持と機能改善体操の効果
東京・新宿周辺を拠点に、機能改善の考え方を基にした陸上運動・水中運動の指導を行っているNPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会 マスター講師の茂木伸江です。
「いつも首や肩がガチガチで、重苦しい……」
聴覚障害のある方から、そんなお悩みを伺うことがよくあります。
実は、聴覚障害者の方は、情報の多くを視覚(目)から取り入れるため、相手の口元や手話を注視したり、周囲を常に目で確認したりと、健常者以上に目を酷使し、首周りの筋肉が緊張しやすい日常を過ごされています。
また、耳の機能は「身体のバランス」とも密接に関わっているため、無意識のうちに身体を固めてバランスを取ろうとし、それがさらなる凝りや疲労につながっていることも少なくありません。
この記事では、聴覚障害のある方に多い「首こり」「バランス力低下」の原因と、その改善に役立つ機能改善体操について解説します。
視覚情報に頼る生活や三半規管との関係、デフリンピックのビジョン、実際の指導現場での体験をもとに、誰もが安心して取り組める運動の可能性をお伝えします。

聴覚障害のある方に多い「首の疲れ」と「バランス力低下」の意外な関係― つまずき不安を軽減する機能改善体操 ―
視聴覚障害からの首の疲れ
手話を読み取る、相手の口元を注視する、周囲の状況を常に目で確認する……。
聴覚障害者の方は、健常者以上に目を酷使し、細かく動かしたりする時間が長くなります。また情報を取るために頭を前方にする傾向もあります。これが、不良姿勢を作り、特有の『首・肩のガチガチ疲れ』を招く原因の一つです。
バランスを取る役割を持つ三半規管
三半規管は耳の奥(内耳)にある、体の平衡感覚を司るセンサーです。主に頭の回転や傾きを検知し、体がどの方向に動いているかを脳に伝えて、歩く、振り向くなどの動作時に姿勢を安定させ、バランスを保つ役割を担っています。
実は、聴覚障害がある方は、三半規管の機能が低下している傾向にあります。
頭を動かしたときに、実際の動きと脳に届く情報にズレが生じ、めまいや、ふらつきが出現しやすくなります。
特に片側の耳が悪い場合、バランスの取れた情報が脳に入らないため、まっすぐ歩くことが難しいなどの症状が出ることがあります。

こうした聴覚障害の方特有の症状・悩みを予防・改善するために、頭の位置を無理なく変化させる簡単な体操やストレッチからでも十分に効果は期待できます。
デフリンピックってご存知ですか?
2025年、日本で初めて「デフリンピック」が開催されました。
デフリンピックは、きこえない・きこえにくい人のための国際的なスポーツ大会で、4年に一度開催されています。
(詳しくはhttps://www.jfd.or.jp/sc/deaflympics/about/)
パラリンピックは多くの方に知られていますが、実はデフリンピックの認知度はまだ高くありません。
しかし大会の現場では、音の合図に代わり、国際手話・色・光・旗など視覚情報を活用した工夫が随所に取り入れられ、聴覚障害があってもスポーツを楽しみ、力を発揮できる環境が整えられています。
この大会が私たちに伝えているのは、
「障害があっても、工夫と理解があれば人は本来の力を発揮できる」
という大切なメッセージです。

デフリンピックで示されているこうした考え方は、スポーツの世界だけの話ではありません。
日常生活の中で身体を動かすこと、体操や運動を通して健康を育む場においても、同じ視点が必要だと私は感じています。
協会の信念と、デフリンピックのビジョンが重なる点
NPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会では、
「真の健康とは、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態である」
という考え方を大切にしています。
現代の日本社会では、
- ・高齢化問題
- ・若年層の低体力化
- ・地域コミュニティの希薄化
- ・地域環境の課題
など、健康づくりを考える際に多面的な視点と継続的な取組が求められています。
デフリンピックのビジョンが示す「共生社会」は、まさに当協会が目指してきた方向性と重なります。
機能改善体操という健康づくりの選択肢
当協会は機能改善を目的にした様々なコンテンツがあります。
機能改善体操(ボディキネシス®︎)
ヨガキネシス®︎
水中機能改善体操(アクアキネシス®︎)
フットキネシス®︎
リズムキネシス®︎
シナプソロジー®︎
詳しくはこちら(https://www.ikinobi.org/trainer/bodykinesis/)
このプログラムは、身体の構造や動きに基づいた解剖学的根拠をもとに構成されています。
解剖学に基づいた根拠あるプログラム
無理な動きや過度な負荷をかけるのではなく、身体本来の機能を引き出し、姿勢改善・動作改善をし、日常動作の座り方、立ち方、歩き方などを見直して、腰痛や膝痛、肩コリの原因を解消します。
身体の歪みやコリ、疲労などを取り除く為の筋肉を整える“ほぐし体操”や“ストレッチ”・体幹や関節を安定させる体操や軽い”有酸素運動”と、日常生活動作やスポーツ…などの動作が負担なく行えるための“コンディショニング”から構成されています。
普段ストレッチをされている方も、ただポーズをとるだけのストレッチになっていませんか?
ストレッチをする時は、筋肉の位置やつき方を意識しながら行うと、とても効果的なストレッチになります。

簡単・シンプルだからこそ効果が出る機能改善体操
マットを使った体操だけでなく、椅子に座って行う体操、タオルやボールの特性をうまく利用した体操…時短ででき、効果的に誰もが取り組みやすい内容が特徴です。
「簡単だから効果がない」のではなく、正しく、継続できるからこそ効果が出る体操です。
手話・文字(字幕)・動画を活用した運動指導の重要性
現在は、動画配信や字幕機能の進化により、聴覚障害者の方も運動情報にアクセスしやすくなっています。
一方で、対面指導では
- ・正しいフォームでできているか
- ・本当にその動きが合っているか
- ・なぜその順番で行うのか
といった点を直接確認できるという大きなメリットがあります。
手話や文字・字幕によるサポートを組み合わせることで、聴覚障害者の方にもより安心して運動・体操に取り組める環境が整います。
聴覚障害の方対象の機能改善体操レッスンの実体験から見えた可能性と課題
2025年協会からの派遣で、ある視聴覚障害団体に登録されている方を対象に、
タオルとボールを使った椅子でできる機能改善体操指導のご依頼をいただきました。
対象者の年齢は、70代〜80代の男女の方々。
様々なツールを使い、手話・字幕のサポート付きのとても手厚い体操の時間となりました。
同じ障害を持つ方同士だからこそ、自然なコミュニケーションが生まれ、
参加者の皆さんのエネルギーは非常に高く、前向きな空気に満ちていました。
声がない世界というのは、私にとって、正直一種独特の空間ではありましたが、手話でコミュニケーションを活発に取られる姿はとてもエネルギッシュ!手話の分からない私にも出会える喜びが伝わり、逆に元気を頂きました。
体操後は、身体がぽかぽかと温かくなり(血行促進)・始める前よりも首がスッと伸びて、多くの方の姿勢改善が見受けられました。
また、体操をする上でのポイントなども「どんな体操から始めればいいですな?」「なぜタオルを使うのですか?」などの質問もいただき、皆さん、とても積極的でした。
一方で、体操を指導する中で、
身体の使い方の問題・聴覚障害があることでの課題があったことは事実です。
・身体の硬さ(柔軟性の低下)
・不良姿勢(頭の位置が肩よりも大きく前方にある・猫背・巻き肩)
・筋力低下
・バランス力の低下
・動きのポイント・細かな指示が伝わりにくいこと…


だからこそ、
こうした取り組みは単発ではなく、継続が重要だと強く感じました。
動きのポイントをきちんと伝えるには、時間が必要ということです。
また、そのポイントをキャッチし、参加者が自分の身体に落とし込むまでに健常者よりも繰り返しの時間が必要と感じました。逆に継続されれば、必ず1レッスンよりも機能改善され、姿勢も動きも変わることができる!と強く思いました。
首の凝りが気になる方へ・簡単な機能改善タオル体操の紹介
①柔らかい長さのあるタオルを首にかける・優しく擦る
【実施のポイント】
・口元は優しく・自然な呼吸を心かける。
・タオルは優しく持つ。
②後頭部のタオルを当てて、後頭部でタオルを後方へ軽く「押す・戻す」を何回か繰り返す。

【実施のポイント】
・息を吐きながら、後ろに押す。
・まっすぐ正面を見たまま動きを繰り返す。
音のない世界でエネルギッシュに生きるために。聴覚障害に伴う「筋力低下」を防ぎ、QOLを高める継続のコツ
障害の有無に関わらず、運動を継続することで、
- 身体機能の改善(柔軟性・筋力・調整力の向上)
- 姿勢改善
- 日常動作のしやすさ
といった効果が期待できます。
これは、
ADL(日常生活動作)の向上、メタボ予防・ロコも予防・フレイル予防、
QOL(生活の質)の向上につながり、生活そのものをよりアクティブにしてくれます。

共に健康を育むコミュニティづくりへ
NPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会は、
子どもから高齢者まで、低体力者・身体障害者・運動愛好家を含め、
健康づくり・体力づくりを目的としたさまざまな事業・取組を行っています。
指導者だけでなく、参加者・運営者も共に関わるコミュニティづくりを通して、人と人、地域社会をつなぐことを大切にしています。
講習会・出張レッスンのご案内
当協会では、機能改善体操プログラムを中心に、講習会・健康事業・出張レッスンのご依頼を承っています。
一般の方から、障害のある方まで、誰もが安心して参加できる運動・体操の場づくりを行っています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、当協会YouTubeにて毎週月曜日に当協会会長・尾陰由美子による朝の10分健康体操L I V E配信しています。
ぜひ、一緒に体操を楽しんでみてください。
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いきのび協会YouTube
最後に、聴覚障害のある方にも、日常を支える健康づくりとしての体操・運動の力を。
デフリンピックのビジョンとも重なる「共生社会」の実現に向けて、これからも取り組みを続けていきます。